6月号 虚偽の情報を流し続ける外資系製薬会社の営業担当者

前回のブログでは、臨床試験のデータを改竄することがどれほど罪深い行為であるかについて、お話しました。ノバルティスの元社員も会社としてのノバルティス日本法人も、社会から厳しい処罰を受けることになるでしょう。

ここで注意したいのは、ノバルティスによる臨床試験データの改竄は、外資系製薬会社による詐欺行為のほんの氷山の一角であるということである。私が話しているのは、外資系製薬会社の営業担当者(MR)による医師への虚偽の情報提供のことである。

薬事法ではMRを次のように定義つけている。MRとは、医薬品の安全性や有効性に関する情報を、医療関係者から収集することと提供することを職務とする者。つまりMRは、自社の医薬品に新しい副作用が発見された場合には副作用情報を医療関係者に早く的確に伝達するのが役目である。また、医薬品の有効性を最大化するような医薬品の使用方法などを医療関係者に伝達し、患者の治療に役立ててもらうことも重要である。しかし実際には外資系製薬会社のMRは、虚偽の情報を医師に提供して、自社の医薬品を処方してもらえるように医師を誘導することを職務としている。このような行為は、臨床試験のデータ改竄と同じことである。

では、実際に外資系製薬会社のMRがどのような虚偽の情報提供をしているかを考えてみたい。

1. 完全なる虚偽
外資系の製薬会社のMRの提供する情報には、全くの虚偽も少なくない。例えばある外資系製薬会社のMRは、その会社の販売する鎮痛薬の副作用について、「最初はこの薬を服用すると眠くなることがありますが、我慢して服用を続けるとすぐに患者様はなれてきて眠気を感じなくなります」と宣伝していた。これは全くの虚偽であり、この薬の服用を1年くらい続けても眠くならないようになるのは非常に稀であった。この会社はこのような虚偽の情報提供を組織的にやっている。
2. 他社の誹謗中傷
ある外資系製薬会社のMRは、他社の販売する鎮痛薬を誹謗中傷することで、自社の鎮痛薬の売上を伸ばしている。この会社のMRは、他社の販売する鎮痛薬Aの効果が服用後数時間で切れることを示す資料を医師に見せて回っている。服用後に同じ時間が経過した後も、そのMRが販売している鎮痛薬Bは効果を持続している。しかし、これは当たり前のことだ。何故なら、鎮痛薬Aは一日3回服用、鎮痛薬Bは一日2回服用なのだから。このMRが医師に見せている資料では、鎮痛薬Aの効果が次の服用時間の前に切れる可能性を示唆しているが、鎮痛薬Bの効果が次の服用時間まで持続するかどうかの情報は全く提供していない。そういう意味で、このMRのやっていることは他社製品の誹謗中傷でしかない。
3.錯誤の利用
医師の勘違いを利用した宣伝行為も多い。ある外資系製薬会社のMRは、患者の認知機能に悪い影響を及ぼす可能性のある自社医薬品について、次のように宣伝していた。「この薬を服用している患者様と、服用していない方の認知機能を調べた結果、有意差は有りませんでした。この薬は認知機能に悪い影響を与えません。」これは錯誤を利用した虚偽の情報である。やや専門的になりますが、統計的検証で利用される有意差という概念は、有意差が有る場合はその試験の結果が正しいと証明できますが、有意差が無い場合はその試験の結果について正しいとも正しくないとも証明できないものです。つまり両者の認知機能に有意差が無かったという検定結果は、両者の認知機能に差が無いことを証明するものではないのです。これは統計学によくある勘違いを利用した虚偽の情報提供です。


外資系製薬会社に勤務するMRは15000人を超える。彼らは毎日一日に8人程度の医師に面会し、虚偽の情報を医師に伝えている。毎日、100000個くらいの虚偽情報が日本国内を飛び交っているのではないか。これは臨床試験のデータ改竄と同じくらい恐ろしいことである。

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